格安のガソリンスタンドが消えていく事情

 関東地盤のホームセンター大手、ジョイフル本田がガソリンスタンドの運営から撤退し、2020年4月から順次、元売り大手の出光興産に店舗を譲渡する。すでに一部の店舗は看板掛け替えや改修工事が始まり、6月までに全7店舗の譲渡作業が完了する予定だ。

【グラフ】元売りは製油所の能力を削減してきた

 ジョイフル本田は千葉や茨城などにあるホームセンターのうち、7カ所でセルフ式のガソリンスタンドを運営。15カ所の灯油スタンドも営業し、ガソリン・灯油販売で136億円の年商があった(2019年6月期)。いずれも出光に譲渡し、今後は出光の子会社が運営する。

■「お客さんを根こそぎ奪われた」

 店舗数こそ限られたが、ジョイフル本田のガソリンスタンドは相場よりも安く給油できる店舗として知られ、週末には給油待ちの車が多く連なった。周辺のある元売系列のガソリンスタンド経営者は、その安売りぶりをこう振り返る。「ひどい時には他店よりは1リットル当たり10数円安かった。お客さんを根こそぎ奪われて、近隣にあった個人経営の零細スタンドはほとんどがつぶれたよ」。

 ホームセンターが本業のジョイフル本田にとって、併設するガソリンタンドは集客装置。ガソリンスタンド自体で儲けが出なくても、それでホームセンターへの来店客が増えさえすれば、会社としての帳尻は合う。さらに、ガソリンの調達ルートにも安さの秘密があった。

 製油所を抱える石油元売りは、自社のブランド看板を掲げる系列店にガソリンを卸す一方で、余剰分をノーブランド品として燃料商社などに販売する。業界では前者が「系列玉」、後者は商社経由で転売されるので「業転玉」と呼ばれている。いずれもガソリンの品質自体は同じだ。

 ただし、元売りが系列スタンドに正規の価格で卸す系列玉と違って、余剰分に当たる業転玉は安く燃料商社に販売されてきた。そうした業転玉を正規の系列玉より割安な価格で仕入れて販売してきたのが、ジョイフル本田のような独自のブランド看板を掲げた、いわゆるプライベートブランドのスタンドである。

「来ないで」呼びかけの効果あった? GWの湘南、地元住民の心境は

新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が要請される異例のゴールデンウイーク(GW)が25日、始まった。神奈川県内では緊急事態宣言発令後も湘南地域などに県外の人が数多く流入し、首長らが「来ないで」と呼びかける事態になった。要請の効果はどこまであるのか。例年のGWとは大きく異なる風景が広がる湘南の街を、記者が歩いた。【宮島麻実】

【写真特集】呼びかけ後の湘南の様子は…?

 静岡県出身の記者は今月入社したばかりで、湘南を訪れるのは初めて。平熱であることを確認し、マスクを付けて電車に乗った。藤沢駅で乗り換えた江ノ島電鉄はガラガラ。同じ車両に3、4人しか乗っていなかった。

 鎌倉高校前駅で下車すると、青空の下に水平線が見えた。江の島方面に向かって歩く。先週日曜(19日)には渋滞が続いていた海岸沿いの国道134号を、車がすいすいと進んでいく。ほとんどは地元の湘南ナンバーと横浜ナンバーだ。パトカーや白バイも目立った。駐車違反を取り締まっているのだろうか。

 観光客はほとんどいないようだ。通りですれ違うのは、ジョギングや散歩をする地元住民ばかり。ランニングをしていた映画製作会社社長の男性(64)=藤沢市=は「よく海岸に来るが、今日は人がいなくてびっくりした。自粛要請が効いたのかな」と驚いた様子。「早く収束してほしいので、観光で来ることは今は避けてもらいたい」と話した。

 途中にある公営駐車場はロープが張られ、使用できないようになっていた。さらに進むと片瀬海岸に到着した。ビーチの入り口には「立ち入りはお控えください」の張り紙が見える。その効果か、人影はまばらで、サーファーの姿も少ない。浜辺には犬の散歩をしている地元の住民がちらほらいるだけだ。

 ◇切実な訴え届く

 散歩に来ていた主婦(49)=鎌倉市=に聞くと「ビーチにいる人は先週に比べて大分減った」とのこと。「他県から来られると不安だったので、ほっとした」と胸をなで下ろしていた。遊びに来る側は軽い気持ちでも、住民にとっては感染リスクが高まり、不安につながることを再確認した。

 先週と打って変わった湘南の姿は、人々がまだ冷静さを失っていないことを示している。だからこそ、地元住民や首長の切実な訴えが通じたのだと感じた。

 テレビや雑誌で見ていた湘南は、ビーチに人があふれ、楽しそうな場所だった。好天の昼下がりにもかかわらずがらんとした海岸に、仕方ないと分かりつつ少し寂しさも覚えた。

 新型コロナが収束したら、もう一度訪れようと思う。今度こそ、笑顔のあふれる海岸通りを歩きたい。